スタンディングデスク「も」いいぞというお話

つまり、スタンディングデスクの本質は「作業時の姿勢のバリエーションを広げる」にあるのではないかと考える。

僕が昔仕事をしていた環境では誰でも自由に利用できるスタンディングデスクが実装されていて、そのとき初めて立って、デスクワークをするという体験を獲得した。

デスクワークといえば座って作業をするのが当たり前と認識されているもので、かくいう自分もそうだったのだけれど、なにぶん、長時間、ずっと同じような姿勢で着座していれば腰を痛めるのは当然のことで、その問題を解決するべく以前から少し世間を賑わせていたスタンディングデスクなる文化に強い関心を持っていた。

実際、スタンディングデスクでの作業をやってみるとこれがなかなか良いものだった。ここで気をつけなければならないのは、机の高さ自体はキーボードの打鍵がしやすい、肘の角度が90度になるような高さで、かつ、ディスプレイを目線の高さと同程度に設置することだ。やってみるの分かるのだけれど、これをすると立った姿勢で猫背になるというのが少し難しくなる。まっすぐ立って、顔は真正面に向ける必要に迫られるのだ。

これは、立った姿勢に限定された話ではなく着座時の姿勢でも同じことが大事だと思うのだけれど、この姿勢を実施するためには、机の高さは使用者にパーソナライズされた高さである必要がある。

文字にしてみると当たり前のことかもしれないけれど、これを考慮に入れないで取り入れてしまい、結果、スタンディングデスクあんまり良くないね、といった感想になってしまう話を見聞きすることが少なくない。

幸い、僕が初めて触ったスタンディングデスクは自分にちょうどよい高さのもので、1日のうち何時間かスタンディングデスクでの作業を取り入れてみると、終業時の腰の痛みがいつもと格段に違うことをしっかり感じ取れていた。

ところで、では1日中立って作業していればいいじゃないか、というとそうではなく、どれだけ良い姿勢であっても8時間も全く同じ姿勢を保っていられる人はいないと思う。すくなくとも自分はそうではない。座って作業しているときでも姿勢は頻繁にどこか何か違う体勢になっているはずだ。それは、足を組み替える程度のことであったり、ひょっとするとあぐらをかくこともあるかもしれない。体育座りもすることもあれば、一見、姿勢が変わっていないように見えて床に設置した足の前後の順番が左右で変わっていたりする。

きっとそれは人間が固定された姿勢を取ることが肉体的にとても難しいことで、Joe Kutner 氏の言葉を引用すると、こういうことを無意識的にやっているということなのだろう。

Hedge 博士は、20分以上座り続けないことを推奨していますが、20分以上立ち続けているのも良くありません。重要なのは、身体を動かし続けることで、姿勢はまめに調整し、休憩も頻繁に取りましょう。 (中略) 数分間立っていて、足に痛みを感じ始めたなら、座るようにしてください。同様に、しばらく座っていて、腰や肩に痛みを感じ始めたなら、立ち上がりましょう。立っているにしても座っているにしても、痛みを感じる状態は良くありません。最も良い体勢は、良い姿勢を保っていられる体勢です。

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結局、スタンディングデスクでの立ち作業が銀の弾丸になるかというとそんなことはなく、要は、作業者が取る姿勢のバリエーションを広げるために存在する、スタンディングデスクとはその手段の一つにしかすぎないのだと考える。

作業時の姿勢のバリエーションを広げる、この目的を達成するためオカムラ製のスタンディングデスク Swift(スイフト)を自宅に導入したのが去年のことである。

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Swift を選んだ大きな理由としては2つある。

スムーズに狙った高さにできる電動昇降型

先に書いたとおり姿勢のバリエーションを広げたい狙いがあったので、座った状態、立った状態どちらか一方に制限されてしまうような、高さが固定された机というのは避けたかった。

Swift はその高さを電動でスムーズに変えられるほか、高さをメモリに保存することができ、好みの高さに微調整するため上下ボタンをポチポチする必要はなく、あらかじめ任意の高さを覚えさせておくと、その高さを呼び出すためのボタンを押し続けるだけで自動でその高さまで調整をしてくれる。

僕の場合、立ち姿勢では 115 センチがちょうどよい天板の高さだったのでそれを記憶させている。

72cm

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115cm

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なだらかなカーブのエッジの天板

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Swift の天板のエッジにはスムースフォルムエッジという種類が用意されていて、これは何が嬉しいかというと天板のカドが手のひらや腕を攻撃してくるというケースを防ぐことができる。これはオカムラショールームで触って気がついたことで、仮にスタンディングデスクでなかったとしても欲しいと思わせる機能だった。

カーブしている部分は意外と広めに確保されているので、慣れないうちはここに物を置いてしまって落下させてしまうことがあるので注意が必要になる。

使ってみて分かった問題と解決法

足の裏が痛い

当然のことながら立ち姿勢にあるとき、全ての体重の負担は足の裏に掛かる。

自宅内にいる場合にはたいてい裸足か、スリッパを履いているわけだけれどもそのどちらでも足裏に発生する体圧の分散が十分ではない。クッションが十分に用意されたスニーカーだとこれが少しは変化するようで、職場でスタンディングデスクをしていたときはスニーカーだったものだったのでこれは盲点だった。

体圧を分散をするために、工場などで立ち姿勢で作業をする人の負担を下げるために作られたマットを買った。

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MISM(ミズム) 疲労軽減マット 楽々クッションマット 4575 BK 黒

MISM(ミズム) 疲労軽減マット 楽々クッションマット 4575 BK 黒

足裏の疲れが完璧に無くせるかというとそういう訳ではない。とはいえ、これは大きな変化を実感することができた。ストレッチやヨガ用のマット代わりにすることも考えて、どーんとでかいのを買ってしまうのもいいだろう。

ケーブルの配線の工夫が必要

机の高さが変化するということは天板に配置した機材のケーブルの配線もそれに応じたレイアウトに工夫する必要があってそれをしないとつまりこうなる。

この問題については、天板の裏側が金属ということでいったんマグネットで貼り付けられるテーブルタップで対応している。配線は汚いが、ちゃんと追従してくれている。

天板の上は綺麗にできたのだけれどね…。

ゲーム用のステアリングコントローラが固定できない

スムースフォルムエッジにしたはいいもののこれは想定外だった。

天板に直接固定するのでは無く固めの雑誌なども挟んでみたが改善されることはなかったので、これは、もう、ステアリングコントローラを固定する専用台を買って解決する時が来たのだということでそうした。

すこし揺れる

筋交いも幕板もない T 字足、かつスタンディングデスクという重心が高くなる構造ということもあり、どうしても若干の揺れは生じてしまう。これが、交通量の多い道路に面した環境で建物も少し揺れることがある場合だと、机にも揺れが反映されてしまい、人によっては強く気になるかもしれない。

自分としては購入前から想定範囲内、許容範囲内だったのでとくに対策していないのだけれど、雑にお金で殴る方法としては、同じくオカムラ製のスタンディングデスクであるところの上下昇降実験台 Volante(ボランチ)があるのでそれを選ぶといいのかもしれない。

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Volante は、これもオカムラショールームで実際に触ったのだけれど、わざと揺らそうとしてもビクともしない屈強さだった。

もれなく耐薬品性がついてくるので、硫酸や塩酸、アンモニアといった薬品を取り扱う一般のご家庭での運用にもとびきり適した素晴らしい製品だと思う。価格は軽量タイプが24万円、重量タイプが43万円からと、買おうと思えば買えなくもない価格設定であるところもアツい。

結論

スタンディングデスクは最高の beatmania IIDX 環境である。